院長インタビュー

開業以来約50年、日本経済の中心地で歯科医療のスタンダードであり続けるために

幅広い患者層から信頼される50年の実績

東京オリンピック後の1967年に開業以来、日本経済の中心地でその時々の患者さんの動向を見てきたと思いますが、歯科医療の需要に関して経済状況の影響はありましたか?

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副院長:
現在高齢の方々は、日本の高度成長期を支えてきた世代です。当時は、“むし歯洪水”と言われた時代でしたが、この地域も当院に初診で来院される方もむし歯が多い状況でした。また、歯周病に対する情報や知識が十分に行き渡っていなかったため、欠損が比較的多く、それぞれの患者さんに合わせて欠損補綴、義歯、インプラント等で対応をしてきました。

現在の貴院に来院する患者さんの年齢層を教えてください。

副院長:
3歳から90歳以上と幅が広いですね。そのなかでも65歳以上の高齢者が半数以上を占めています。当院は50年近くの歴史のある医院ですので、ありがたいことに長いお付き合いの患者さんが非常に多いです。もう半数は近隣にお勤めしている若い層の方たちが占めています。

開院当初と現在では患者さんの口腔内環境に変化はありましたか?

中川勝洋 副院長

中川勝洋 副院長

副院長:
口腔内環境は10年前、20年前と比較するとはるかに良い状態になっています。もちろん年齢層によって患者さんのニーズは違ってきますから、時代によって違ったニーズを一つの診療所で対応してきました。その結果、幅広い患者層の治療に対応できることが、歴史のある当院の特徴ではないでしょうか。また予防の大切さを伝え、全身の状況を把握したうえで診療をすることが、当院の一貫した診療スタイルといえます。

一貫して予防を基盤とした良質な治療を提供し続ける

患者年齢に合わせた治療・予防・メンテナンスについて教えてください。

Dr.中川聡

Dr.中川聡

Dr.聡:
現在は20代のうちからメンテナンスに通う方が、増えているように感じます。時代も変わり高齢の方たちも、昔のように次々と歯周病によって欠損が進んでいくという状況ではありません。ですから、従来のように欠損補綴とメンテナンスを分け捉えるのではなく、補綴の部分を含めた口腔内全体のメンテナンスが主体になっています。
当院では患者さんの症状等に応じて、毎月・3カ月・半年・1年…という感じでメンテナンスにいらしていただいています。口腔内環境を維持するためには、年齢が上がれば上がるほどインターバルを短くしていかなくてはならないという状況ですので、日ごろから若い世代の方にも予防の大切さを繰り返しお伝えしています。

オフィス街でのメンテナンスは定着しづらいといわれています。その要因はどのようにお考えでしょうか。

副院長:
企業に勤めている方は移動があるので、同じインターバルでのメンテナンスは難しいと思います。そういった方たちが、またこの地域に戻ってきてリピーターとして来院していただけた時、当院が評価されたと感じますね。再来院が何度となく繰り返され、その患者さんとは自然と長いお付き合いになっていきます。その点からも、歯科医師は一人の患者さんと一生付き合っていく職業と感じます。それが、歯科医師としての1番の楽しみでもあります。
お付き合いの長い患者さんは友達みたいに接し、冗談も言い合います。しかし、時には歯科医師として、叱る時もあります。また、「先生に叱られたくて来ました」という患者さんもいます。それも長い付き合いの中で築いてきた信頼関係があってこそだと思います。このような歯科医師との付き合いによって、口腔ケアがきちんとできていることが、“歯医者と長い付き合いのある人は長命の方が多い”といわれる理由かもしれませんね。

メンテナンスの際、むし歯と歯周病以外にチェックしてもらえることはありますか。

ブラッシング指導をする歯科衛生士

ブラッシング指導をする歯科衛生士

副院長:
むし歯や歯周病の状態はもちろん、義歯の適合、歯牙の多い患者さんに対してもかみ合わせの状態を必ず確認します。かみ合わせがずれたりすると顎関節症、不定愁訴を引き起こす原因になります。

木を見て森を見ずに非ず、全身から歯科治療を考える

基礎疾患(高血圧症・高脂血症・糖尿病等)を抱えている患者さんの治療において、どのような点に注意をなさっていますか?

副院長:
口腔機能を健康に保つためには、患者さんの全身状況を把握したうえでの診療は必須と考えています。さらに医科の主治医とのコラボレーションをきちんと行った上で、全身状況を把握して歯科処置を行うということが、患者さんを診るうえで1番大事なことだと思います。
現在はお薬手帳もありますし、主治医に問い合わせすると検査データも渡してもらえますので、基礎疾患のある方には主治医の先生と連携を取りながら、安全な歯科治療を心がけております。

Dr.聡:
私は口腔外科で全身麻酔や全身管理について学んできました。口腔内に限らず、体に関するあらゆる相談にものってあげられるような診療所でありたいと思っています。その患者さんの全身状態を把握した上で診ていくということが、今後の歯科界、とりわけ臨床家には求められていることだと思います。

世代と環境に応じて柔軟に診療オプションを用意

聡先生は60代以下の患者さんの担当をされていますが、患者さんの特徴を教えてください。

患者さん本位の治療を提供しています。

患者さん本位の治療を提供しています。

Dr.聡:
40~50代は詰めた物が外れてしまった、歯が欠けたなどで来院される方が多いです。20~30代は補綴自体をしている方が少ないこともあり、来院される患者層としては多くはありません。

副院長:
それは、先ほど言ったように現在の若い方の口腔内環境が、以前と比べ良くなってきているということにも繋がりますよね。また、都市部では口腔内を清潔に保つという意識が高いため、メンテナンスやクリーニングを求める患者さんの需要が高いことも欠損の少ない要因といえます。以前のように、むし歯を放置した状態で来院されるという世の中ではなくなってきていますね。

東北地方へ歯科医療支援に行ったお話をお聞きしました。

東北歯科医療支援の様子

東北歯科医療支援の様子

副院長:
東日本大震災の時に、私が会長を務めていた東京歯科保険医協会で、10回ほど歯科医療支援に行ってきました。被災者の口腔内の状態を診て、都市部と地方では口腔内環境にこれほどまでにもギャップがあるのだなと実感しました。当然ながらライフスタイル、ヘルスプロモーション等には地域差がありますが、その違いが如実に口腔ケアに現れているように感じましたね。
当院の様に都心にある医院では、ヘルスプロモーションの在り方に伴う患者さんの意識の変化、さらに口腔環境の変化は現在でも大きいです。都市部では口腔環境が飛躍的に改善されましたが、今後も歯科医療に対する患者さんのニーズは変化し続けていくものだと思います。当院では、その時々のニーズと歯科医療との整合性に照らして最適な治療を提案し、患者さん自身に選んでもらうことをモットーにしています。

オフィス街のかかりつけ歯科医の理想形を実現

勝洋副院長は口腔組織学で医学博士を取られていますが、ご興味をもたれたきっかけを教えてください。

数多くの認定証や表彰状

数多くの認定証や表彰状

副院長:
ペリオの付着上皮に興味を持ったことがきっかけです。もう30~40年前の話になるのですが、東京歯科大学卒業後、開業のかたわら、昭和大学の口腔組織学教室に入室し勉強しました。現在でも歯周病の患者さんの対応に活かされていると思っています。

現在も聡先生は母校の東京医科歯科大学付属病院にて診療をされていますが、貴医院での診療に活かされていることはございますか?

Dr.聡:
治療の種類によっては、当院ではなく大学病院で行う方がよいと判断するケースがあります。その様な場合は患者さんを大学病院にお連れし、適切な診療環境でスムーズに治療が行えるということで、当院のメリットの一つだと考えております。

副院長:
そういう意味でも当院はかかりつけ歯科医診療所として、症状の重い患者さんの検査や治療を行う二次医療機関との連携で理想的な形を保っています。

インプラント治療のあり方を提言

インプラントと入れ歯を患者さんに提案する際の基準を教えてください。

モニターを使用した丁寧な説明

モニターを使用した丁寧な説明

副院長:
私自身はインプラント創世記のブレード・インプラントの時代から取り組んできました。が、インプラントで全てを解決できると思ってはいません。インプラントの適応症かどうかを必ず選別してから行っています。第一に患者さんの身体の状態を考えなくてはいけませんので、それに合わせて義歯、インプラントと常に選択肢を拡げています。

高齢者へのインプラントの適用、その後施設等に入居した際のメンテナンス等の注意点を教えてください。

副院長:
今まで口腔内の状態が良かった方でも、在宅医療になったり介護施設に入居したりすると、年数が経つにつれてどんどんと口腔内のレベルが落ちてきます。先ほど言ったようにメンテナンスの間隔が6カ月でよかったものが、4カ月、3カ月と短くなってきます。患者さんのリスクを考えないでインプラント治療をすると、インプラント周囲炎等などが発症する恐れがあります。そうすると施設生活ではインプラントの維持管理がとても難しくなります。やはりインプラントは患者さんの体調と生活環境を考えて、どこかの時点で外すことも考えて行わないといけない補綴処置だと思います。

貴医院でのインプラントと義歯の適用比率を教えてください。

副院長:
義歯の方がはるかに多いですね。ある時インプラントブームというものがありましたが違和感がありました。咬合や歯周病そして全身の状態を理解しないで、何でもかんでもやってしまって大丈夫なの?失敗するケースもあるんじゃないの?と、思っていました。単に審美的な患者さんの希望だけに応えていたら、危ないケースも多くなります。

さくらだ歯科の感染予防対策

貴医院での感染予防対策の取り組みを教えてください。

副院長:
当然ですが当院ではタービンを含め、患者さんの口腔内に入れて組織に触れる機器、機材はすべて滅菌を行っています。
5年前に2年間の検討期間を経て、私が東京歯科保険医協会の会長時代に歯科医院の感染予防という小冊子をつくり会員全員に配布しました。つい最近も歯科医院の滅菌対策がネガティブな内容でマスメディアに取り上げられていましたので、保団連(全国保険医団体連合会)から全国の歯科医院に感染予防対策に関する小冊子を配りたいとの話があり、新たに5万部を印刷し配布しました。その1番の基本は歯科医院で行うことと、病院で行うことは違いますので、全てが滅菌レベルでなくてもいいのですね。スタンダードプリコーションの概念で清掃・消毒・滅菌の3つを分けて考えることが大切です。

患者と医師の関係から人と人との信頼関係に変わる瞬間

歯科医としてやりがいを感じるときはどんな時ですか?

患者さんとのコミュニケーションを大事にしています。

患者さんとのコミュニケーションを大事にしています。

Dr.聡:
歯科治療は、患者さんに何かをしたらダイレクトに反応が返ってくるところがあります。私たち歯科医師の行為に対して、患者さんが感謝をしてくれていると感じられた時に最もやりがいを感じますね。
最初はどうしても患者さんと医師との距離感を感じることもあるのですが、診療を通じてコミュニケーションを交わしていくうちに、距離感が縮まると自然と患者と医師の関係から人と人との信頼関係に変わってきます。信頼関係が増してきますと、患者さんも満足感を持って通院してくれているのだなと肌で感じられて、歯科医師としても人としても嬉しく思います。